不動産投資コラム
2018/09/21
『都内新築利回り8%』『賃料保証30年』
大阪真和エンタープライズの高橋です。 冒頭の『都内新築利回り8%』『賃料保証30年』という思わず飛びつきたくなる二文、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうです、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」事業を行っていたスマートデイズの謳い文句です。
2018年4月に事件が明るみに出て少し時間が経過しておりますが、この「かぼちゃの馬車」事件について、悪者はスマートデイズ・スルガ銀行であるといったような報道も多く、またそう思われた方も多いと思います。今回はこの事件について私が感じたことや、個人的観点をお話ししたいと思います。
まずは事件の内容をおさらいしてみましょう。 スマートデイズ社は、投資用物件として首都圏を中心とした女性専用シェアハウス約800棟10,000室を、約700名の投資家に販売し管理していたわけです。 仕組みは簡単です。言葉が悪くなりますが、シェアハウスが建てられそうな土地を見つけては建築し「スルガ銀行から融資を受けて購入していただくと我々が一括借り上げしちゃうので、空室の心配をすることなく、月々もプラス収支なので誰でも気軽に不動産投資ができまっせ!(もちろん手数料は引きますけどね)」という、いわばサブリース事業というやつですね。 謳い文句を見て、賃料を保証してくれるということは返済が滞らないし、諸費用は経費に計上できる……これは巨額の借金をしても旨味しかない!!ということで、年収800~1000万円のサラリーマンが飛びついたのが始まりです。
ところがどうでしょう、考えてみてください。女性専用・キッチン・お風呂・トイレ・リビング等をシェアして安い賃料で住もうというただでさえ少ない属性の人たちは、普通のマンションには経済的理由等で入居できない人たちであると容易に想像がつきます。賃料支払い能力の低い方が多く住む可能性が高いわけですから、賃料の回収は当然できなくなっていきました。 しかし、当初の謳い文句である『利回り8%』を実現するための『賃料保証30年』。賃料が回収できない場合はスマートデイズ社がオーナーに支払わなければなりません。 建築見積費を高い金額で発注し建築業者からバックマージンを得たり、就職斡旋手数料を賃料保証にまわしたりと頑張ってみましたが、新築販売がうまくいかなくなっていき、とうとう賃料保証に回すためのお金がない~~!!もうだめだ~~~!!となって、オーナーへの保証賃料は滞ってしまいました。
滞った後、今回の事件の中心にあるとされるスルガ銀行の『スルガスキーム』という融資手法が問題になり、スルガ銀行もスマートデイズ同様問題になってきております。 ※『スルガスキーム』という融資手法は審査基準を極端に低く設定し、返済能力がない人にも融資を行う事で高い金利を設定し、本契約とは別に抱き合わせで組ませるローンで利益を確保するという手法。
スマートデイズ、関係会社の不正を黙認することで、スルガ銀行は莫大な利益を上げました。 しかしスマートデイズの経営破綻、返済の滞り、多数の自己破産者が生まれた事が原因で、金融庁はスルガ銀行に対して銀行法に基づく報告徴求命令を出しました。返済能力が乏しい人でも融資が受けやすくなるよう、源泉徴収票や金融資産の改ざん等の不正が多数確認されているようです。 金融庁はスルガ銀行に対し「不正を見抜けなかった審査体制」等、実態把握に乗り出し、対応・内容次第では、行政処分を出す判断材料にもなりそうです。
その後『自分たちもスマートデイズの被害者だ』という団体、一緒に戦い問題を解決しましょうという詐欺コンサルタント会社も現れ、さらに追い打ちをかけるような二重詐欺を訴える被害者も出てきています。 ニュースやワイドショー等は一斉にスマートデイズとスルガ銀行を叩き晒し者にし、世論は極悪不動産会社、極悪銀行、騙された可哀想な投資家達となってしまったのが現在の状況です。
では、皆さまは今回のかぼちゃの馬車事件に関して「何が悪くて、誰が悪いのか?」の判断はどうお考えでしょうか? 私が感じた「何が悪くて、誰が悪いのか?」について、簡単に数点上げさせて頂きます。
・『シェアハウス投資』は単純に難しい 特殊物件は知識が必要 ・『立地』シェアハウスが成り立つには相当良い立地でないと難しい ・『価格が高すぎる』木造アパートと同等の価格ならアパートの方が良い 利回りも高い ・『女性専用』属性の絞り込みすぎ ・『スマートデイズ』 ・『スルガ銀行』 ・そして『投資家』
このように書くと、 『投資家』は騙された立場だから悪くないでしょ!!裁判の結果、犯罪と確定したら悪いのは不動産会社と銀行だ!! と思われると思いますが、
・投資をする時シェアハウスが本当に良いと思ったか? ・徹底的に家賃相場を調べスマートデイズが破綻、倒産してもシェアハウスを運営できると思ったか? ・スマートデイズが倒産したとして、他に管理をしてくれる管理会社があるのかどうか調べたか? ・絶対大丈夫という確信を持てるまで勉強、研究したか?
こう書くとどうでしょうか。投資家には全く責任がないといえるでしょうか。 スマートデイズ・スルガ銀行による融資を通すための金融資産等の資料の改ざんは、投資家も共謀していた事実すら発覚しています。
誰でも何か選択をする時、損害を被る可能性があれば自分で納得できるまで調べるはずです。私には、ろくに調べもせず、学びもせず、人任せにしようとした投資家たちが結果として痛い目にあったという事件に思えてなりません。 何事もそうですが、自分が行う選択には必ず「自己責任」という言葉がついて回ると私は考えています。 不動産に限らず、投資はもともと「自己責任」ですし、投資に限らず人生は自己責任です。そうであるからこそ「人生一生勉強」という言葉が世にあるのではないのでしょうか。
「投資家も悪い」と書くと少しきつい書き方かもしれませんが、この事件から多くの事が学べるような気がします。
大阪真和エンタープライズ
不動産投資コラム
2018/09/21
セミナー講師の不動産投資コラム
『都内新築利回り8%』『賃料保証30年』
大阪真和エンタープライズの高橋です。
冒頭の『都内新築利回り8%』『賃料保証30年』という思わず飛びつきたくなる二文、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうです、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」事業を行っていたスマートデイズの謳い文句です。
2018年4月に事件が明るみに出て少し時間が経過しておりますが、この「かぼちゃの馬車」事件について、悪者はスマートデイズ・スルガ銀行であるといったような報道も多く、またそう思われた方も多いと思います。今回はこの事件について私が感じたことや、個人的観点をお話ししたいと思います。
まずは事件の内容をおさらいしてみましょう。
スマートデイズ社は、投資用物件として首都圏を中心とした女性専用シェアハウス約800棟10,000室を、約700名の投資家に販売し管理していたわけです。
仕組みは簡単です。言葉が悪くなりますが、シェアハウスが建てられそうな土地を見つけては建築し「スルガ銀行から融資を受けて購入していただくと我々が一括借り上げしちゃうので、空室の心配をすることなく、月々もプラス収支なので誰でも気軽に不動産投資ができまっせ!(もちろん手数料は引きますけどね)」という、いわばサブリース事業というやつですね。
謳い文句を見て、賃料を保証してくれるということは返済が滞らないし、諸費用は経費に計上できる……これは巨額の借金をしても旨味しかない!!ということで、年収800~1000万円のサラリーマンが飛びついたのが始まりです。
ところがどうでしょう、考えてみてください。女性専用・キッチン・お風呂・トイレ・リビング等をシェアして安い賃料で住もうというただでさえ少ない属性の人たちは、普通のマンションには経済的理由等で入居できない人たちであると容易に想像がつきます。賃料支払い能力の低い方が多く住む可能性が高いわけですから、賃料の回収は当然できなくなっていきました。
しかし、当初の謳い文句である『利回り8%』を実現するための『賃料保証30年』。賃料が回収できない場合はスマートデイズ社がオーナーに支払わなければなりません。
建築見積費を高い金額で発注し建築業者からバックマージンを得たり、就職斡旋手数料を賃料保証にまわしたりと頑張ってみましたが、新築販売がうまくいかなくなっていき、とうとう賃料保証に回すためのお金がない~~!!もうだめだ~~~!!となって、オーナーへの保証賃料は滞ってしまいました。
滞った後、今回の事件の中心にあるとされるスルガ銀行の『スルガスキーム』という融資手法が問題になり、スルガ銀行もスマートデイズ同様問題になってきております。
※『スルガスキーム』という融資手法は審査基準を極端に低く設定し、返済能力がない人にも融資を行う事で高い金利を設定し、本契約とは別に抱き合わせで組ませるローンで利益を確保するという手法。
スマートデイズ、関係会社の不正を黙認することで、スルガ銀行は莫大な利益を上げました。
しかしスマートデイズの経営破綻、返済の滞り、多数の自己破産者が生まれた事が原因で、金融庁はスルガ銀行に対して銀行法に基づく報告徴求命令を出しました。返済能力が乏しい人でも融資が受けやすくなるよう、源泉徴収票や金融資産の改ざん等の不正が多数確認されているようです。
金融庁はスルガ銀行に対し「不正を見抜けなかった審査体制」等、実態把握に乗り出し、対応・内容次第では、行政処分を出す判断材料にもなりそうです。
その後『自分たちもスマートデイズの被害者だ』という団体、一緒に戦い問題を解決しましょうという詐欺コンサルタント会社も現れ、さらに追い打ちをかけるような二重詐欺を訴える被害者も出てきています。
ニュースやワイドショー等は一斉にスマートデイズとスルガ銀行を叩き晒し者にし、世論は極悪不動産会社、極悪銀行、騙された可哀想な投資家達となってしまったのが現在の状況です。
では、皆さまは今回のかぼちゃの馬車事件に関して「何が悪くて、誰が悪いのか?」の判断はどうお考えでしょうか?
私が感じた「何が悪くて、誰が悪いのか?」について、簡単に数点上げさせて頂きます。
・『シェアハウス投資』は単純に難しい 特殊物件は知識が必要
・『立地』シェアハウスが成り立つには相当良い立地でないと難しい
・『価格が高すぎる』木造アパートと同等の価格ならアパートの方が良い 利回りも高い
・『女性専用』属性の絞り込みすぎ
・『スマートデイズ』
・『スルガ銀行』
・そして『投資家』
このように書くと、
『投資家』は騙された立場だから悪くないでしょ!!裁判の結果、犯罪と確定したら悪いのは不動産会社と銀行だ!!
と思われると思いますが、
・投資をする時シェアハウスが本当に良いと思ったか?
・徹底的に家賃相場を調べスマートデイズが破綻、倒産してもシェアハウスを運営できると思ったか?
・スマートデイズが倒産したとして、他に管理をしてくれる管理会社があるのかどうか調べたか?
・絶対大丈夫という確信を持てるまで勉強、研究したか?
こう書くとどうでしょうか。投資家には全く責任がないといえるでしょうか。
スマートデイズ・スルガ銀行による融資を通すための金融資産等の資料の改ざんは、投資家も共謀していた事実すら発覚しています。
誰でも何か選択をする時、損害を被る可能性があれば自分で納得できるまで調べるはずです。私には、ろくに調べもせず、学びもせず、人任せにしようとした投資家たちが結果として痛い目にあったという事件に思えてなりません。
何事もそうですが、自分が行う選択には必ず「自己責任」という言葉がついて回ると私は考えています。
不動産に限らず、投資はもともと「自己責任」ですし、投資に限らず人生は自己責任です。そうであるからこそ「人生一生勉強」という言葉が世にあるのではないのでしょうか。
「投資家も悪い」と書くと少しきつい書き方かもしれませんが、この事件から多くの事が学べるような気がします。